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NHKで「おっぱい」を特集
6月20日23:30からNHKで「おっぱい」が特集された。番組名は「サイエンスZERO」。
つまり、科学的に「おっぱい」というものを紐解いていくというのだ。
ただしここで言う「おっぱい」というのは、いわゆる母乳のことであって、乳房そのものを科学するわけではない。
では「サイエンスZERO」ではいったい、この「おっぱい」をどのように特集したのだろうか。番組の内容を見ていこうと思う。
魔法の薬おっぱい!!!!
(母乳)#サイエンスZERO pic.twitter.com/0FbU3Cqnks— ひーたん (@kokemaru_life) June 14, 2021
サイエンスZEROとは?
Copyright NHK (Japan Broadcasting Corporation). All rights reserved.
「サイエンスZERO」は、毎週日曜日午後11時半から放送されている科学教育系番組で、2003年4月9日の放送開始以降、18年以上続く息の長い番組である。この番組は、「未来を変えるかもしれない最先端の科学と技術を紹介するとともに、世の中の気になる出来事にも“サイエンスの視点”で切り込んでいく」ことをコンセプトに作られている。また、再放送が毎週土曜日午後11時から放送されている。
今回の特集
今回のエピソードでは、哺乳類の「おっぱい(母乳)」がどのようなものであるのかについて、科学的に解明していく。
熱帯から極地まで、あらゆる環境に哺乳類が生息できるのは、「おっぱい」で子育てするという戦略をとったからに他ならないとされている。いったいどういうことだろうか。
同じ哺乳類でも、動物によって母乳の種類が全く異なる。研究者たちは現在、動物によって最適な成分に変化した“オーダーメード”のおっぱいを分析し、種ごとの生存戦略を解き明かそうとしている。
彼らは母乳を「神秘の液体」と呼び、今回、それがどう神秘であるのかなど、その性質のすばらしさや必要性について解説した。
【20日夜11:30】 #サイエンスZERO
「#おっぱいの科学
“神秘の液体”の謎に迫る」哺乳類の最大の特徴“おっぱい”に科学で迫る。意外なあるものから進化した!?未熟な人間の赤ちゃんを病気から守る驚きの仕組みとは?おっぱいは #哺乳類繁栄のカギ だった!
[Eテレ] https://t.co/KtGNOkYh3T— NHKドキュメンタリー (@nhk_docudocu) June 19, 2021
いろんなおっぱいを科学的に見る。
帯広大学では30年以上、牛をはじめとした哺乳類のおっぱいの研究を行っている。その研究では「どの動物でもおっぱいには共通して、水分・糖・タンパク質・脂質が含まれているが、その割合は動物の種によって全く異なる」ということがわかってきている。
【浦島教授がNHK総合「サイエンスZERO」に出演】生命・食料科学研究部門 浦島教授がNHK総合「サイエンスZERO」に出演します。
今回は「おっぱいの科学 “神秘の液体”の謎に迫る」をテーマに,浦島教授が解説しました。
放送日時は6月20日(日)午後11時30分からです。https://t.co/27A3ipEjPk— 帯広畜産大学 (@obihiro_univ) June 16, 2021
おっぱいはオーダーメイド?
どうして種によっておっぱいに含まれる水分や栄養素の割合が異なるのか。これは、その動物自体の特徴や、生息環境に起因しているという。驚きべきことに、その動物の必要に応じて、おっぱいは進化してきたというのだ。その異なるおっぱいのの例を3つほど紹介したい。
1. アザラシのおっぱいは…
例えば、タテゴトアザラシのおっぱいはクリームのようにドロドロとしている。いったいそれはなぜか。牛のおっぱいと比較すると、牛は水分が9割ほどを占めるが、タテゴトアザラシは栄養分(特にその大半が脂質)が7割ほどを占めている。つまりタテゴトアザラシのおっぱいには3割ほどしか水分が含まれていないため、このような違いが生まれるのだという。
これは、アザラシが寒い海の氷の上で体温を保って暮らすべく、皮下脂肪をつけなければならないために起こった変化である。その上授乳期間は2週間しかないため、急ピッチで栄養を蓄える必要があるのだ。
眠くて、眠くて…
眠さに負けて沈んでいきました💤#のんほいパーク #豊橋 #動物園 #ゴマフアザラシ #アザラシ #赤ちゃん #しらたま #アザラシは水の中でも眠ることができます pic.twitter.com/aVbeTJli1U— 豊橋総合動植物公園(豊橋のんほいパーク (@non_hoi_park) June 20, 2021
2. キリンのおっぱいは…
一方で、キリンのおっぱいはアザラシのものとは対極にサラサラである。これは、キリンにとってはおっぱいは栄養源であるよりも、水分の補給源であるからである。さらに、300日ほどの授乳期間もあるため、栄養の補給は少しずつでよいのだ。
\今日は、#世界キリンの日 です!!/
一年で最も昼の長い夏至に、
最も背の高いキリンについて、よく知ってもらおうと、キリン保全財団が2014年に制定しました。ぜひ一緒に魅力たっぷりのキリンに思いを馳せましょう!
本日はキリン盛りだくさんでツイートします!#WorldGiraffeDay #TamaZoo pic.twitter.com/zr9HbrRZ4f— 多摩動物公園[公式] (@TamaZooPark) June 21, 2021
3. カマイルカのおっぱいは…
カマイルカのおっぱいは他の種の母乳とは色が異なり、緑色をしている。イルカは皮下脂肪がないと体温が維持できないため、おっぱいに脂肪を吸収しやすくする成分が含まれている。それが、緑色の正体である「胆汁」。効率よく脂肪を吸収するための色なのである。
リクはトレーナーのサインで音を出すようになってきています。まだ音は小さくてトレーナーには「プキキュー」と聞こえますが、みなさんはどう聞こえますか? #カマイルカ #リク #鳴音 #マリンピア日本海 pic.twitter.com/Aq3znlzOqF
— 新潟市水族館マリンピア日本海PR (@marinepia_2) June 19, 2021
時期によってもおっぱいは変化する
動物は主に食の変化などによって、生後30日と60日では必要な栄養分が変わってくる。そうするとおっぱいに含まれる栄養分も変化してくるそう。もちろんヒトのおっぱいも例外ではなく、少しずつタンパク質が減っていくなど、様々な変化が起きているのだという。
ヒトのおっぱいの特徴
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人間のおっぱいは牛と比較すると、水分と栄養分の割合はそれほど変わらない。しかし、栄養分の内訳が異なる。人間のおっぱいは牛に比べて糖が圧倒的に多いようだ。人間は哺乳類の中でも特別大きな脳を持ち、とりわけ赤ちゃんはその脳が急激に発達するため、大量のエネルギーを消費する。その失われたエネルギーの補給を必要とするため、人間のおっぱいには糖が多く含まれているのだそうだ。
人間の赤ちゃんは哺乳類弱最弱・・・?
人間の赤ちゃんはあらゆる動物の中でも最も弱いという。動物で唯一二足歩行をするため、重力がかかり、骨盤が小さくなったことで、未熟な状態の子供が生まれてきてしまうのだとか。その未熟な状態の赤ちゃんを守るために、ヒトのおっぱいは進化してきたようだ。
赤ちゃんを病気から守る
赤ちゃんを守ると言っても肉体の強さを築くだけではなく、免疫力を築いていかなければならない。赤ちゃんは抗体を作る能力がないからだ。そのためにおっぱいを与える。
私たち哺乳類は、病原体から赤ちゃんを守るタンパク質が多様に進化していると言われている。これは、哺乳類それぞれが生息環境の病原体などをうけ、病気を防ぐ機能を発達させ、おっぱいとして子供に与えるためだと専門家は言う。
おっぱいで育った赤ちゃんは下痢になりにくい
粉ミルクではなく、おっぱいで育った赤ちゃんは下痢になりにくいのだとか。
その秘密は「ミルクオリゴ糖」にある。
先ほどの病気の免疫の話にも通じるが、ミルクオリゴ糖には感染防御機能が備わっている。そして、ビフィズス菌の餌にもなるため、腸が強くなるのだという。そしてそのミルクオリゴ糖はいまのところおっぱいからだけ摂取することができるのだ。
人工的にミルクオリゴ糖を作ることに成功!
しかし最近、「ヒトミルクオリゴ糖」というものを人工的に作ることに成功した企業が日本にある。乳糖と微生物による発酵作用によってミルクオリゴ糖を作成したという。現在大量生産にも成功したと言い、粉ミルクであってミルクオリゴ糖が含まれているものが日本で発売される日も近いようだ。
キリングループ、ヒトミルクオリゴ糖を2022年から事業化へ https://t.co/kpBmt29S2c
— Shinya Fushinobu (@sugargroove) October 23, 2020
人工保育の現場でおっぱいの情報は必要不可欠!
動物園や水族館など、人工保育の必要な場では、与えるミルクをいかに本物のおっぱいに近づけるかが課題となっている。先ほども伝えたように、おっぱいは種によって性質が異なるため、その種ごとにあった適切なおっぱいを与える必要があるのだ。
鳥羽水族館での人工保育
鳥羽水族館では、イルカの仲間である「スナメリ」という動物の赤ちゃんが生まれたが、母親が育児放棄をしてしまい、職員は人工保育を余儀なくされた。
イルカの人工保育は、世界でも成功例がほとんどないというほど非常に難しく、職員も半分諦めていたという。
まず職員はアザラシの人工保育でも使われていた犬用ミルクでおっぱいの代用をしようと考えたが、なかなか上手くはいかなかった。体重は日に日に減少していったそう。
血液検査を行ったところ血中タンパク質の減少が確認される。そこですぐさまミルクにタンパク質と脂質を補った。すると体重はみるみる増加し成長。人工保育は見事成功した。この例からも、その種に合ったおっぱいがいかに必要かが理解できる。
人工保育のスナメリ仔の授乳。#鳥羽水族館 #スナメリ pic.twitter.com/9oCPJuu7zf
— むぅ。。 (@mutobock) July 14, 2019
おっぱいの誕生秘話・進化の歴史
ここまでおっぱいについての説明をしてきたが、ではそのおっぱいは、どのようにして誕生したのか。その誕生秘話を見ていきたい。おっぱいを語るためには、まずどの生物がおっぱいを使用し始めたかという起源に遡らねばなるまい。元祖のおっぱいの持ち主とされている生物は現在の研究で明らかになっている。
元祖おっぱいの持ち主と、突然変異
元祖おっぱいの持ち主と呼ばれているのは、ハリモグラである。ハリモグラは初期の哺乳類で卵を産むため、乳首がない。
しかし彼らは皮膚から白い汗のようなものを出し、それを子供になめさせることでおっぱいを与えている。ハリモグラは卵を濡らすために汗をつけるが、その汗には殺菌作用があるとされている。
この汗が突然変異し、栄養豊富な母乳となっていったのではと専門家はみている。
ちなみに、イギリスにいたとき大好きだったハリネズミ。
日本語で聞くと、ごっちゃになりやすいし、
どちらもとげとげだから間違い易いけれど、
ハリネズミの方がハリモグラよりかなり小さい。https://t.co/FaWyXi2KP2ついでにヤマアラシも pic.twitter.com/rheGcQ7ws8
— yumi ゆみ (@ygjumi) June 20, 2021
哺乳類がどこでも暮らせる理由
哺乳類は過去から現在にかけてあらゆる環境下で生活してきた。
それはこれまで話してきた通り、哺乳類が生息環境や子育てスタイルに応じて、「おっぱい」そのものを最適な成分に進化させてきたからである。
卵を産む生物は、自分の子供たちが栄養にアクセスできるような限られた環境でしか繁殖できない。
母乳の進化によって、他の動物がすんでいなかった場所にも住むことができるようになり、哺乳類は地球全体に生息するようになったのである。
【本編配信はこちら】
https://www.nhk.jp/p/zero/ts/XK5VKV7V98/episode/te/54Z1JR6Y2Z/
最後に
軽い気持ちで見始めた「おっぱい」特集でしたが思ったよりも情報満載で面白かったですね。正直最初はその「おっぱい」か…と思いましたが、最後には「おっぱい」の見方が変わっていました。お暇があれば1度見てみてください。